機 関
機 関
内燃機関の種類と付属装置
- 車とか,メカ・機械が好きな方なら問題なく進めると思います。そうでない方は,自動車の運転免許を取得したときに勉強しているので,もう一度復習の意味で勉強していきましょう。
内燃機関の分類
- 燃料を添加する方法による分類
- 電気点火機関
- 燃料と空気の混合ガスを圧縮して,シリンダ内で点火プラグの電気火花を使用し,点火爆発燃焼させるもの。
- ディーゼル機関
- シリンダ内で空気を強く圧縮して高温にし,そこに霧状の燃料を噴射して自然着火させ,爆発燃焼させるもの。
- 電気点火機関
- 使用燃料による分類
- 4サイクル電気点火機関
- 主としてガソリンエンジン
- 2サイクル電気点火機関
- 船外機などに多い。ガソリンとエンジンオイルを50対1ぐらいの割合で混合した燃料を使うことが多い。
- 高速ディーゼル機関
- 軽油使用が多い。
- 低速ディーゼル機関
- 重油使用が多い。
- 4サイクル電気点火機関
- エンジンのサイクル(行程)による分類
- 4サイクル機関(ピストンが2往復)
- 吸気弁と排気弁がある。
- 吸気行程・・・吸気弁が開き,ピストンが下降し,燃料空気を吸い込む。
- 圧縮行程・・・吸・排気弁が閉じて,ピストンが上昇し,圧縮する。
- 膨張行程・・・吸・排気弁は閉じたまま,点火爆発によりピストンは下降する。
- 排気行程・・・排気弁が開き,ピストンが上昇し,排気ガスを出す。
- 2サイクル機関(ピストンは1往復)
- 吸気弁・排気弁がなく,ピストンの上下に伴い,燃料及び排気ガスが吸・排出される。
- 混合ガソリン(ガソリンとエンジンオイルを50対1ぐらい)を使うものが多い。
- 4サイクル機関(ピストンが2往復)
付属装置
- 燃料装置
- 経路:燃料タンク → パイプ → フィルタ(燃料こし) → 燃料ポンプ → 気化器(キャブレタ) → 吸気マニホールド → シリンダ
- フィルタ・・・ゴミや水分を取り除く
- 燃料ポンプ・・・エンジンにより駆動され,一定圧力で燃料油を送る。
- キャブレタ・・・燃料と空気を混合し,混合ガスを作る。
- 吸気マニホールド・・・混合気がシリンダに送り込まれる通り道
- 経路:燃料タンク → パイプ → フィルタ(燃料こし) → 燃料ポンプ → 気化器(キャブレタ) → 吸気マニホールド → シリンダ
- 潤滑装置
- エンジンの運動を滑らかにし,金属の磨耗を防ぎ,また,シリンダ内の気密を保つ役割をする。
- 種類:オイルパン(油受け),オイルポンプ,オイルフィルタ,オイルクーラー。
- 潤滑油が送られているところ:主軸受,カム軸,クランク軸,シリンダ壁
- オイルポンプは,カム軸とギヤで連結されている。
- 冷却装置
- 機関を冷却して低温に保ち,良好な状態を維持する。
- 海水等を冷却ポンプで吸い上げて使用するものがほとんどである。
- 清水タンクを設置し使用するものもある。
- 空冷式もある。
- 機関を冷却して低温に保ち,良好な状態を維持する。
- 排気装置
- 船外機・船内外機
- ドライブユニット内から海水中に放出するもの。
- 船内機
- 車と同じようにマフラーを通じて大気中に放出する。
- 船外機・船内外機
- 電気装置
- 機関の始動,点火,蓄電池(バッテリー),充電,照明装置などがある。
- バッテリーは,普通12~14ボルト(V)のものを備え,始動電動機の始動,点火プラグの点火,航海灯の照明などに使用される。
- 点火プラグ・・・シリンダーカバーに取り付けられ,電気火花を飛ばして,混合ガスを爆発させる。プラグは,はずしてみて「きつね色」に焼けているのがよい。
- 発電機・・・Vベルトで駆動し,電気を発生させバッテリーを充電する。
- バッテリー・・・発電機で発生した電気を蓄える。
- Vベルト・・・発電機,冷却ポンプなどを駆動する。定期的に交換が必要。
- オイルポンプはVベルトでは駆動していない(ギヤでカム軸と連結している。)。
- 操縦装置
- 舵輪(ハンドル)と機関の出力(スロットル)の調整,プロペラの回転方向(前・後進,中立)を変えたりする(クラッチ)などのリモコンレバーがある。
発航前の点検(始動準備)
- ドライブユニット(推進器)は下がっているか(水面の中に入っているか)。
- 船底にビルジが溜っていないか。
- エンジンの取り付けにゆるみがないか。
- Vベルトにゆるみや損傷はないか。
- 潤滑油は十分か,汚れていないか。
- 燃料系の点検
- 燃料コックは,開いているか。フィルターにごみや水はたまっていないか。
- 燃料管又はホースから燃料漏れはないか。タンクに異常はないか。
- 燃料は十分にあるか。
- 電気系の点検
- 高圧コードに損傷はないか。取り付けは大丈夫か。
- プラグの締め付けは大丈夫か。外れていないか。
- バッテリーのターミナル部(コードの接続部)は緩んでいないか。固定されているか。
- バッテリーの液面は適正か。充電は十分か。
- 操縦装置の点検
- ハンドル,かじ,リモコンレバーはスムースに動くか。ガタはないか。
- 冷却系の点検
- 冷却水(清水)はあるか。タンクがある場合は,水面の量は大丈夫か。
- 海水フィルターやホースから水漏れはないか。つまりはないか。
- 海水取入れ口は開いているか(オーバーヒートの原因になる。)。
- エアフィルターの点検・清掃(目つまり,汚れ)・交換
電気点火機関の取扱
- エンジンの始動
- 必ず機関室の換気を行うこと(燃料漏れ,気化しガスとなって溜っていた場合,引火して爆発する。)。
- 混合ガスは空気よりも重いため,下部に溜りやすい。
- 機関の始動
- リモコンレバー中立,スタータースイッチON。
- 機関が一度でかからなかった場合,長時間スターターを回してはならない。5~6秒間の始動(車のエンジンをかけるのと同じ感覚です。)。
- 始動モーターが回らないときは,バッテリーの容量,ターミナルのゆるみの点検
- 2サイクルエンジンは寒冷時に始動しにくいことがあるので,チョーク弁(キャブレターを通る空気量を調節する弁)を閉じて,ガソリン濃度を濃くして点火しやすくする。
- 必ず機関室の換気を行うこと(燃料漏れ,気化しガスとなって溜っていた場合,引火して爆発する。)。
- 試運転
- 機関指導後,いきなり発進しない。暖機運転(1000~1500回転)しながら各部を点検する。
- 各計器類は正常に作動しているか。エンジンに異常音・振動はないか。
- 潤滑油や冷却水に漏れはないか。
- 冷却水は出ているか(検水口又は排水口で点検)
- 機関指導後,いきなり発進しない。暖機運転(1000~1500回転)しながら各部を点検する。
- リモコンレバーの操作
- クラッチを入れるときは素早く操作する。
- クラッチが入ってからの増速・減速(スロットルの操作)はゆっくりしなければならない。
- 無茶な操作はしない(前進からいきなり後進に入れるようなこと)。
- クラッチを切り離してエンジンの回転数を上げ下げする場合は,リモコンレバーを中立にして,スロットルノブ(クラッチの接続ボタン)を押したまま,レバーを動かす。
- 運転中の注意と作業
- 周囲の状況を確認することはもちろん,機関音,計器,ショック,振動など細かなことにまで神経を集中する。
- 機関は,連続最大出力の80%程度で使用するのがよく,効率もいい。この出力を常用出力という。
- 高速航走してきたときは,すぐにエンジンを停止することなく,しばらくはアイドリング状態で機関を冷却する。
- 冷却水計・油圧計が異常を示したとき,機関から異常音がしたときなど,まず機関の回転を下げて,確認してからその後に停止するようにする(いきなり停止しない。)。
- 機関運転中は,燃料ガスへの引火・爆発防止のため,機関室の換気は十分に行う。
- 点火時期の調整
- 点火時期を調整する必要がある場合は,専門の修理業者に依頼する。
- 点火ポイントの調整は特殊な計器が必要で難しい。
- 点火時期が早すぎる場合
- 始動時の逆回転,ノッキングを起こしやすい。
- 点火時期が遅すぎる場合
- 出力の減少,燃料消費量の増大,オーバーヒートを起こしやすい。
- 点火時期を調整する必要がある場合は,専門の修理業者に依頼する。
- 機関室の保管
- 長期間の陸揚げ時において注意すること。
- 冷却部に清水を通し洗浄する。冬機関は凍結防止のため冷却水は抜いておく。
- 点火プラグをはずし,その穴から潤滑油を注入しておく。
- キャブレタの空気取り入れ口をふさぎ,湿気の侵入を防ぐ。
- バッテリーをはずし,充電しておく。
- ギア・エンジンオイルは新しいものと交換する。
- 燃料タンクは満タンにしておく。
- 長期間の陸揚げ時において注意すること。
主要計器の動き
- 回転系
- クランク軸の1分間の回転数を示す。
- 冷却水計
- 暖機運転の完了,オーバーヒートの早期発見や機関の焼きつきを防止する。
- 異常の場合の処置
- 機関の回転を下げる。
- Vベルトの緩み,冷却水取り入れ口のつまり点検
- 海水フィルターのつまり,冷却ポンプの点検
- オイルの点検
- 潤滑油圧力計
- エンジン各部に潤滑油が正常に圧送されているかを示す。
- 異常の場合の処置
- 機関の回転を下げる。
- オイルの量,水の混入,フィルタの目詰まりの点検
- 電流計
- バッテリーの充電状態を示す。
- (+)プラスを示していれば充電中,(-)マイナスであれば充電不足。
- 異常な場合は,バッテリーのターミナル部のゆるみ,Vベルトの点検
- バッテリーの充電状態を示す。
- 電圧計
- 機関運転中は,普通14V(ボルト)あたりを示している。
- その他
- トリム計・・・推進器の上下の角度を示す。
- チルトスイッチ,チルトモーターなどがある。
動力伝達装置
船内外機の動力伝達装置
- 船内外機では,エンジン本体のクランク軸の回転がダブルユニバーサルジョイント(自在継手(じざいつぎて):動力の方向を切り替える。)を介して推進器に伝達され,さらにクラッチを経て,ドライブシャフトに伝わり,減速歯車で減速されてプロペラに伝わる。
- ドライブユニット(推進器部分)は,はね上げたり,下ろしたりすることが可能で,始動させるときは,下げておく。
- ドライブユニット内は,ギアオイルで満たされており,オイルが乳白色になっている場合は水が混入している。
- トリムタブは,航走中の操だ力を左右均等に調整する役目を持っている(直進性)
船外機の仕組み
- 船外機は,頭部にエンジン本体がありクランク軸の回転が直接ドライブシャフトに連結され,プロペラに伝えられる。
- 冷却水ポンプは,ドライブシャフトの中間に取り付けられ,軸が回転することによって,機関室内を循環させている。
- 減速歯車とクラッチは,ドライブシャフトの最下部に取り付けられ,プロペラの回転と前後進の切り替えを行っている。
- チルトピン
- 船外機をトランサム(船尾板)に取り付けたとき,船底の線と船外機のキャビテーションプレートが平行になるのが最もスピード,その他性能的に効率がよい。そのために取り付け角度をピンの位置を差し替えることによって調整することができる。
電気機器
バッテリーの取り扱い
- バッテリー内には極板と電解液が入っている。
- 電解液
- 硫酸と蒸留水を混合した希硫酸
- 液は,極板上10~13mmぐらいの高さに保つ。減ったときは蒸留水を補充する。
- バッテリーには,アッパーレベルとローレベルの目盛りがついており,その間に液面があればよい。
- 電解液
- バッテリーは,使用しなくても自己放電して比重は低下する。
- 比重が1.23以下になったものは充電する(20℃で,1.28~1.30に保つ)。
- 充放電を繰り返すと完全充電ができなくなる。
- 過放電させると極板が痛む。
- バッテリーのターミナル部
- 腐食防止のためグリスを塗っておく。
- グリスは,配線したあとに塗るのがよい。
- バッテリーの充電
- 充電中は,酸素と共に水素ガスを発生するので,換気及び火の取り扱いに十分注意する。
- 他のバッテリーと連結するときは,プラスはプラスに,マイナスはマイナスに接続する。
- バッテリーの交換目安
- 側面が膨らんできたら,新品と交換する。
- 過放電させた場合には,新品と交換する。
- 十分な充電をしても比重が変化しないときは,新品と交換する。
機関に関する単位と計算
単位
- 体積の単位
- 1リットル=1000cm3=1000cc
- 1キロリットル=1000リットル=1m3
- 1リットル=1000cm3=1000cc
- 重量の単位
- 1ccの水=1g
- 1000cc=1kg
- 1000kg=1t(トン)
- 1ccの水=1g
計算
- 燃料消費量の計算
- 1時間あたりの消費量×航走時間(航走距離÷速力)
- 例題)速力15ノットで航走する場合,1時間あたり20リットルの燃料油を消費する船が,同じ速力で30海里航走するときの燃料消費量は何リットルか。又,予備としてその20パーセントを加算すると何リットルか。
- 30÷15=2時間(航走時間)
- 20×2=40リットル
- 予備20% 40×0.2=8リットル 加算すると48リットル
- 残りの燃料の計算
- 残油量=出港時の積量-消費量
- 消費量は,上記消費量の計算で求める。
- 残油量=出港時の積量-消費量
- 時間当たりの消費量の計算
- 1時間あたりの消費量=(積み込んだ燃料-残量)÷所要時間
- 混合比の計算
- 例題)清水100に対して不凍液25の容積割合の水溶液を20リットルつくるために必要な不凍液の量は何リットルか。
- 100+25=125
- 125÷25=5
- 20リットル÷5=4リットル
- 例題)混合油を使用する2サイクル電気点火エンジンにおいて,混合比が50対1の混合油を作成するには,15リットルの燃料油に何リットルの潤滑油を混ぜ合わせればよいか。
- 15リットル÷50=0.3リットル
- 15リットル÷50=0.3リットル
- 例題)清水100に対して不凍液25の容積割合の水溶液を20リットルつくるために必要な不凍液の量は何リットルか。